10月14日(土)に驚くようなニュースが拡散されています。

トヨタ自動車は、残業時間に関係なく毎月45時間分の残業代を支給する新制度を導入する方針だ。主に30代の総合職が対象で、従来の裁量労働制と違い、実際の残業が45時間を超えれば残業代を追加支給するのが特徴。一定額以上の残業代を保証しながら社員に効率の良い働き方を促し、生産性を高める狙いがある。一定額以上の残業代を保証する新制度は、事務や研究開発に携わる係長級の約7800人が対象。社員が適用を申請し、会社が認めれば、45時間分の残業代(月17万円)を一括支給する。実際の残業が45時間を超えれば残業代を追加支給し、残業の上限は従来通り月80時間にする。

これだけを読めば、とんでもなくオイシイ制度のように見えなくもないけれども、真実はどうなのだろう?私なりにいくつかの疑問も生じてきた。ここからは私の個人的な意見ですが、よければ読まれてください。

中卒だらけの町工場では昔からあった制度

20年以上も前になりますが、町工場で働いていた知り合いの会社には、実はこの制度がすでにありました。一流の企業とかではなく、社員の9割が中卒の町工場です。

どうしてこのような制度があるかと言うと、町工場では仕事の量そのものが安定していません。

今月は暇で毎月のように定時前から、メンテナンスや掃除をしていたかと思えば、翌月は、休日返上で深夜2時まで働き、工場の2階で仮眠をとって働くのだとか・・。

残業代はしっかりと支給してくれる会社でしたが、これだと給与は全く安定しません。今月は残業して手取りが30万円あるのに、翌月は10万円しかないかもしれません。

そこで、会社の社長は、社員の生活の安定のために、20時間分の残業代は、20時間の残業が無くとも支給するようにしていました。

あまり知られていないようなことなので、トヨタのニュースに驚く人もいるかもしれませんが、昔ながらの町工場では、よくある話しなのだそうです。

トヨタ自動車の技術系役職になぜ適用されるのか?

しかし、こういった小企業で昔ながらにやっている給与制度を、日本を代表する企業であるトヨタ自動車がなぜ今頃採用するのでしょうか?

冷静になって考えていくと、なんとなくですが、その答えも見えてきます。

トヨタの社員、まして理系大卒の技術系の給与は、言わずといれた高給取りのイメージがありますが、内訳の多くには残業代も含まれています。

例えば、日常的に月45時間以上の残業をほとんどの社員がしているとしたらどうでしょう?

自動車の生産といえば、基本的には、それを作る労働力が主力ですが、それをマネージメントしていく技術系の人たちは、驚くほどに長時間労働になります。

45時間と聞けば、「この時代にそんなに残業するのか?」と思えそうですが、一日で考えれば2時間程度ですし、休日に会社に出てくれば45時間なんてのは、あっさりと超えます。

実際には、技術職の係長クラスとなれば、そのほとんどの人が45時間を超えているのではないでしょうか?世の中でも、デスクで働く銀行や信販会社の人には、45時間残業を超える人は、そらじゅうに居ます。

そうなると、そもそもこの制度は会社側にメリットが産まれます。

協定はもはや飾りでしかない80時間残業合法化への準備か?

残業が少ない月は、給与も少なくなるし、そういった月日が長くなると生活の安定が困難になるという、町工場ならではの暖かい社長の気遣いとは違い、トヨタ自動車にこのような制度が採用されれば、確実に企業はおかしな方向へ向かいます。

冷静に考えてみなければいけないのは、そもそも世間には労働基準法というものがあり、1日8時間。週40時間がルールということである。そして、トヨタ自動車では、残業に関しての36協定なるものがあり、月45時間。年に360時間まで残業ができるように、労使協定が結ばれているのです。

月45時間以上の残業になる場合には、別途個別に申請しなければいけまんが、この新制度の採用によって、それらが簡略化されるとの話しもあります。つまりは、45時間以上働かせることを前提に作られた制度なのではないでしょうか?

労働基準法では労働時間を1日8時間、週40時間と定めている。トヨタは労使で結んだ「36(サブロク)協定」で残業を認めている。原則「月45時間、年360時間まで」だが、繁忙期の超過を認める特別条項付きの36協定を結んでおり、新制度はこの範囲で運用する。新制度では上司が対象者に時間の使い方の権限を移す。繁忙期に備え残業の上限時間を月80時間、年540時間に広げる方向で組合と議論する。




そもそも残業しないで帰ることができない職場になっていくのでは?

この制度には、他にも様々な見えない問題が潜んでいます。

1.新制度は本人の希望による申請による

新制度はあくまでも本人の希望によるものですから、そもそも申請しなければ適用もありません・・・。と、言いたいところですが、会社が決める新制度に同意しない係長って、この先に課長になれますかね?

おそらく課長は、係長の残業時間なんてのは把握していますから、毎月のように45時間以上働いているであろう係長が誰であるかは知っているはずです。そもそも、他の係長が全員申請するのに、自分だけしませんなんて、社内で通用しますかね?

仮に私のようなズル賢いやつが申請しても却下されます。どーせこいつは20時間だけ働いて貰うもんだけ貰おうって魂胆だなと。本人の希望によるという書き方は、キレイ事でしかありません。働く側は、本当にコレを望んでいるのでしょうか?

2.45時間働いて帰るのが当たり前だろ?って風潮が始まる

45時間分は貰えるのが前提になりますが、そこで、「今月は残業2時間でしたー」って通用しますかね?

おそらく、何もない月でも、「おい!お前は新制度で働いているんだから、45時間残業するのが当たり前だろ!」って流れになりませんかね?

事務所に誰も居ない休日に出てきて、一人で掃除させられたりしませんかね?

現場も含めて、現製造業の人手不足は深刻な問題です。この先、さらに働き手が不足していくことは明白で、ここから数年でさらに厳しい労働環境が待ち構えているでしょう。

変革が急速に求められる国内自動車産業と労働者不足の現状

日本は豊かな国だと思っている人も多いですが、私は労働の犠牲でなりたっている不幸せな国だとも思っています。

先日、似顔絵の有名な人が、このようなコメントをしていました。

「日本の似顔絵師は、世界で圧倒的に強く、非難も最も多い」

似顔絵の世界選手権は、数日間に渡り、宿泊しながら絵の完成を目指すそうですが、日本は常に世界のトップレベルなのだそうです。

なぜなら、日本人は、その数時間の間、ずっと部屋にこもり寢らずに絵の完成を目指すのだそうです。

他の国の選手は、もちろん普通に食事を楽しみ、他の選手たちと交流を楽しみ、睡眠をとって絵を完成させます。

他の国の選手は、そんな日本人選手を良くは見てないそうです。なんて哀れな・・と思ってるのが本音だとか。

自動車の業界は、これから大きな変革が間違いなく起こります。ハイブリッドの技術は、世界ではすでに期待されているものではありません。

この先10年内に、ガソリンで走る車を作るのを辞めることを発表している国もありますし、ITの革新的な進歩で、自動運転を始めにあらゆる技術がこれまでの車の概念を変えるものになっていきます。

グーグルやアップルが自動車に続々と技術を投入してくる中で、かつての技術大国と言われた日本が、今の労働力で競争力を保っていくには、さらなる超時間労働にしか道がないのではと考えてしまいます。

それは、かつての高度成長経済が、多くの人の長時間労働の犠牲で成り立っていたと思えるからです。

 

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